君の行く道は流血の都へと続く


再考。
にTBです。


私は静かに立ち上がった。

わたしは しずかに たちあがった

あ、たかはししに ちずがわたった

あ、高橋氏に地図が渡った



多くの謎の答えが眠る場所。
その地へと真実の探求者たちを誘う地図。
地図は今、高橋某なる人物の手元にあるようだ。

終局のカタストロフィに向かって、
今、物語のギアはトップに入った!

■□■□■□■【アナグラム・リレー企画=第一回ぷち清水賞テンプレ】■□■□■□■□■  
【ルール】
 リレー式トラバ企画です。
 前の参加者の記事の中から任意の一文を選び、それをアナグラムしてください。
 アナグラムで得られた一文をもとに

 「「脱獄不可能」と呼ばれる警戒厳重な刑務所。
  その牢獄に長年繋がれている謎の人物の正体とは!?」

 という謎に迫ってください。
 記事はひとつ前の参加者の記事にトラバしてください。
 分岐は不可とします。万一、二つトラバが重なった場合は先にトラバされた記事のほうを優先してリレーしていきます。
 (もう一方の記事からリレーを続けることはしませんが、その記事自体は参加とみなします。)

 参加条件は特にありません。
 同一人物がひとつもしくは複数のブログで何度参加しても可とします。
 ただし、自分自身が書いたものをリレーするのは別ブログからでも不可とします。

 企画終了条件は
 記事が20リレーするか、もしくは企画者が終了宣言をした時です。

 審査は特にありません。
 企画元が気に入った作品はまとめ記事で大々的に讃えます。

 ※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。

 企画元 やみくもバナナメロン http://nightegg.exblog.jp/
 企画協力 オアフ党 http://ishio.exblog.jp/
 お題原案 ぢぇみにのBlog[Evolution III] 

http://jemini.exblog.jp/4742069
 たぶん総元締 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/

■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



これまでの経緯
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# by lifeblood | 2006-12-11 13:59

最終話『風俗王の遺言』


関西で風俗王の異名をとった1人の男が死んだ。
風俗産業の世界では、誰もが一目置く存在だった男が、
死に際の病床で口にした「遺言」は、業界で生きるすべての
人間の心に深く刻み込まれた。

その遺言とは、2つあった。

1つは、
「ピンサロ、風呂、明るすぎや!」

もう1つは、
「濡れる似非(えせ)ホスト、負けや!」


最初の言葉は、おそらく次のような意味だろう。

「ピンクサロンの店内照明が明るすぎると、他の客からも
 自分のプレーが丸見えになってしまい、嫌がられる。
 風呂、つまりソープランドも浴室の明かりを落とした方が、
 年増のソープ嬢にとっては何かと都合が良いであろう」

そして2つ目の言葉。

「濡れる、というのは比喩的表現。ホストクラブに通うマダムを
 相手にするなら、ホスト自身が濡れる、つまり欲情していては
 話にならない。そんな奴は負け犬の似非ホストだ」

まあ、どちらも当たり前といえば当たり前だが、
風俗業界に身を置く者なら、確かに金言といえるだろう。

しかし、驚くべきは、そんなことではなかった。

風俗王が死んだのは、半年も前。
その時既に、彼は重要な事件の犯人の名を予言していたのである。



事件とは、
広島女児殺害事件。


最初の言葉、
「ピンサロ、風呂、明るすぎや!」
これは、
「ピンサロ・フロ・アカルスギヤ」

そう、アナグラムである。
並べ替えると、

「フアンカルロス・ピサロ・ヤギ」

そしてもう1つの言葉、
「濡れる似非(えせ)ホスト、負けや!」
これは
「ヌレル・エセホスト・マケヤ」

並び替えると、
「ホセマヌエル・トレス・ヤケ」


前者はピサロ容疑者が名乗っていた偽名、
後者は警察から12月8日に発表された、
その本名なのだ。

なぜ風俗王は、半年も前に後々起こる事件の
犯人の名を知っていたのだろうか?

それは、誰にもわからない。
一般人には想像すらつかない暗黒世界、
それが風俗業界というものなのかもしれない。

享楽都市の孤独・完結
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# by lifeblood | 2005-12-08 21:35

『オチ・46』



「村長は、確かに『曽根』と書き残しました。
 しかし、これは特定の曽根を示したものではなかった。
 背後から襲われた村長には、犯人が誰なのか、
 わからなかったのです」

「では、ダイイングメッセージの意味は?」

「この村には曽根しかいない。だから、とりあえず、
 曽根某が犯人であることは間違いない。村長が
 残したダイイングメッセージの意味は、それがまず1つ」

「もう1つあるのか?」

「あります。そっちのほうが重要です。ダイイングメッセージを
 残せば、必ずや名探偵がやってくる。名探偵とは、そういう
 謎解きが三度の飯より好きな人種ですからね。で、名探偵が
 来れば、必ずや真犯人を暴いてくれるだろう、と。村長は、
 そういう目論みで、ダイイングメッセージを残したのです。
 そして、思惑どおり、私・名探偵Xがやってきた」

「なるほど。名探偵を呼び寄せるためのメッセージだったのか」

「そういうことです」

「で、名探偵X。犯人は誰なんだ?」

「あいつです」

名探偵Xは、1人の男を指さした。

「おお、あいつか!」

終わり。

……いや、これもまたダミーの真相だ。
本当の真相は……。

バトンは第3走者に渡った。
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# by lifeblood | 2005-11-09 19:50

乱調清香島事件・真相編

乱調清香島事件・探偵編

(真相編)

探偵は、ニヤリと笑みを浮かべた。
悪魔のような邪悪な笑みだった。

「ほう、十戒ね」

「……そうです」

「それは、もちろんノックスの十戒を指しているんだろう?」

「……そうです」

ノックスの十戒。
推理小説が好きな人なら誰しも聞いたことがあるだろう。
『陸橋殺人事件』等で知られるロナルド・ノックスが、
推理小説において遵守しなければならないルールとして
明文化した、10の項目。
日本でも江戸川乱歩の著作等でその内容は紹介されている。

簡単にいえば、こんな感じだ。

1・犯人は物語の初めから登場している人物でなければいけない。

2・探偵方法に神託などの超自然力を持ち込んではいけない。

3・密室に秘密の通路や抜け道を用いてはいけない。

4・科学上未確定の毒物を登場させてはいけない。

5・中国人を登場させてはいけない(西洋では神秘的な存在ととらえられた)

6・探偵の直感で事件を推理してはいけない。

7・探偵自身が犯人であってはいけない。

8・読者が知らない手がかりで解決してはいけない。

9・ワトソン役は自分の判断をすべて読者に知らせなければいけない。

10・双子や変装による二人一役などは、あらかじめ読者に双子や変装が
   得意な人物の存在を知らせた上でなければ用いてはいけない。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「意味など何もないはずですが……どうしてもノックスの十戒のうち、
いくつかが今回の事件で意図的に破られているような気がするんです」

「ふむ。良い感じだね、ワトソン君。たとえばどんな例があるんだい?」

「まず探偵さん、あなたです。ミステリーの神の神託で、ここにやってきた、
と言ったじゃないですか。それに事あるごとにあなたは直感で推理をする。
これが推理小説なら、十戒の2と6を犯しています」

「面白い。続けてみたまえ」

「老夫婦は中国の方々でしたから、5に違反。『肉塊落』なんていう薬は、
現代科学上、公になっているものではありません。だから、4の違反です」

相変わらず、探偵は厭らしい笑みを満面にたたえている。

「そして、10。殺された彼女に双子の妹がいたなんていう話は初耳ですし、
弟の女装に至っては話になりません。完全なルール違反です。」

こうやって話をしていても、いまだ私には事件の真相が見えてこない。

「部屋ごとエレベーターですって? 秘密の通路、ここに極まれり、ですね。
十戒の3は完全に無視されています。それから、8ですが、読者が知らない
手がかりも何も、手がかりなんて全くといっていいほど提示されていない。
私が部屋で見つけたマザー・グースの額も、聖書や鏡の茶色いしみも、そして
壁の放射状のひび割れも、手がかりのようでいておそらく事件には全く無関係だ。
だから、8はルールとして全く機能していない」

「もう1つ、僕のほうから付け加えよう。十戒の9だ。ワトソン役の君は、
この事件がノックスの十戒に対する違反という、いわば逆見立てと気付いて
いながら、なかなかそれを口にしようとはしなかった。これが小説なら、物語は
君の一人称で書かれているはずだね。つまり、君は読者に自分の判断を知らせて
いなかったことになる。だから9も破られているわけだ」

「そうですね。その通りです」

こんな馬鹿馬鹿しい見立てが、私の彼女が命を落とした事件の真相に
つながるというのか?
事件は真相の解明へと突き進んでいるのかもしれないが、私の気分は、
それに反比例して暗黒の闇へと深く沈んでいく。

「さあ、ワトソン君。残る十戒は2つ。1と7だな」

「……1、犯人は物語の初めから登場している人物でなければいけない……
この事件の後半から登場した人物はただ1人です。……そして7。……。
ノックスの十戒すべてが破られているのだとしたら、彼女を殺した犯人は
探偵さん、あなたしかいません」

探偵は、ゆっくりとしたリズムで拍手をした。

「お見事。完璧だね」

「……教えてもらいましょう。こんなくだらない見立てに、どんな意味が
あったというんですか? 百歩譲って、気のふれたミステリーゲームに私たちが
巻き込まれたのであったとしても、論理的な推理も緻密なトリックもない。
挙句の果ては聖典・ノックスの十戒総破りだ。本格ミステリーファンなら、
ここまで読んで本を投げ捨てるでしょうよ」

「それじゃあ、こちらから質問させていただこう」

「なんですか」

「本格ミステリーとは、いったい何ですか、上清水先生?」

と、その男は言った。

どういう意味だ? こいつは何を言っているのだ?

「先生とはどういうことですか。私は医者でも教師でもありませんよ」

「ワトソン君、いや、上清水君。君は将来、本格ミステリー至上主義の作家
として、推理作家を目指す気鋭の若者たちにとって大きな障壁となることを
運命づけられているのだよ。ミステリーのルールは厳格に遵守し、謎の解明は
あくまで論理的に、と主張する。そこにホラーやSFやメタミステリーの要素が
入ってきたものは、邪道として容赦なく切り捨てる。そういう作家にね」

「私が作家になる? それもミステリー作家に?」

「そうだ。君は日本のミステリー界を背負って立つ大家になる。しかし、それと
同時に、本格にこだわるあまり、ミステリーの発展を阻害し、若く革新的な
才能の芽を摘んでしまうことになる」

探偵が話す言葉の10分の1も理解できない。
しかし、えもいわれぬ使命感が私の中で頭をもたげつつあった。

「文学界にミステリーの神は実在する。その神が私に神託を与え、この場に
派遣したのは、本格ミステリーとはいったい何なのか、それを将来の大作家・
上清水一三六青年に深く考えさせるというのが目的だったのだ。いや、目的と
いうよりも、それこそがこの事件の真相なんだよ。ノックスの十戒にことごとく
唾を吐きかけるという究極のアンチミステリーを君に提示することがね」

言葉が出ない。
こんな時に用いる言葉など最初からないのかもしれないが。

「この事件が、君にとってどう作用するのかまでは、僕は知らない。ミステリー
の神ですら、それはわからない。上清水先生が本格という言葉の解釈に幅広い
可能性を持たせるようになるのか、それとも逆に徹底的にロジックとトリックへの
こだわりが強化されてしまうのか? いずれにせよ、作家・上清水一三六の
アイデンティティとなる『本格魂』に大きな影響を与えることだけは、もはや
間違いないだろうね」

ふと、どこからか声が聞こえてくる。
それは遠くからの呼びかけのようでもあり、
私のすぐ耳元で囁いているようでもあった。

「さあ、もう一度問う。上清水先生、本格ミステリーとはいったい何ですか?」

しかし、もう探偵の言葉などに、私は耳を傾けてはいなかった。

どこからか、別の優しい声が聞こえてくる。

私は、理不尽な、極めて理不尽な理由で愛する彼女を奪われた。
彼女の死に与えられた「意味」は、私にとって「無意味」と同義語だ。
この事件の真相など、とうてい受け入れるわけにはいかない。
彼女のためにも。私のためにも。
私は、いつか必ず、彼女の死に、誰もが、そして私自身が納得できるような
説明を、解釈を、理由を、真相を与えてやる。いや、与えなければならない。

本格ミステリーとは何か?
それは、今回の事件に私が新たなる解決をもたらすことができた時、
私自身にもその答えが見つかるのだろう。
彼女の死にいつの日か私が与えるロジック。それが「本格ミステリー」だ。



私はここよ。
ここにいるわ。

ずっといる、私はここに…。
とても暗くて湿っぽくて。
私はただじっと待っている。

もしもいつの日か誰かが。
私を見つけてくれたのなら
私は、きっと…

私はここいにいるわ…




「彼女」は、ずっと私・上清水一三六に呼びかけていた。
混沌と静寂が支配する闇の世界から。
そしてその声は、ようやく私に届いたようだ。

私は「彼女」を必ず見つけてみせる。
私の残る人生、すべてを賭けて。




闇から呼びかける「彼女」の名は、「本格ミステリー」――。



 ~終幕~
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# by lifeblood | 2005-03-29 02:01

乱調清香島事件・探偵編


乱調清香島事件・前編にトラックバック

……気が付くと、私はホテルロビーのソファに寝かされていた。
どうやら彼女の惨たらしい亡き骸を目にした後、気を失っていたらしい。

「お目覚めかな?」

聞いたことがない声だ。
私は、ソファから体を起こし、声がした方へ視線を向けた。
そこには、深紅のタキシードに身を固めた中年の男が立っていた。

「愛する彼女のあんな姿を見たのだから、気を失うのも無理はない」

「あなたは、誰ですか?」

「僕はこの事件に幕を引くためにやってきた探偵だよ」

「探偵? それより先に警察へ通報するべきだ!」

「死体の様子を見たのだろう? あれが警察の手に負える殺人だと思うかい?
僕はミステリーの神から神託を受けてここに来たのだ」

いきなり妙な男の登場だ。
しかし、こんな現実離れした状況も、なぜかこの島、このホテルの内部に
いる限りでは、ほとんど違和感がない。

「で、探偵さんとやら。あなたは何をしようというのです?」

「言っただろう。事件に幕を引くと。さあ、さっそく始めようじゃないか」

「私はどうすれば……」

「決まっている。君は僕のワトソン役だ。まずはもう一度、現場へ」

島に来てまだそれほど時間が経っていないというのに、彼女は無残にも
殺され、変な探偵が現れて、私はワトソンになっている。
何をやっているのだろう、私は。
この異常な展開は、私の人生でどんな意味を成しているのだろう?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2階の客室。
私がこのホテルに着くや否や、彼女に案内された部屋。
今は、彼女の惨殺死体がベッドに横たわっている。

「これはまた、興味深い死体だね」
探偵は彼女に近付いた。

「顔面の肉がほとんど、こそぎ落とされたようだ。ふむ、
EAT ME!か。どんなに空腹でも僕は御免だね」

「こんな状況で、恋人だった私を前にして、よくそんな冗談が
言えますね」

「彼女の顔面は実際に食べられたのだろうか?」
私の抗議も彼には全く届いていないようだ。

「誰が食べるっていうんですか!」

「そう。誰も食べやしない。EAT MEなどというメッセージは、
犯人の悪ふざけさ」

「悪ふざけ? 何を根拠にそんな」

「この現場を見ての直感だよ。僕はあらゆる謎を直感で解決する。
論理的に解答を導き出すなんて、殺人は数学パズルじゃないんだからね」

「それでよく探偵が務まりますね」

「それこそが真の名探偵さ。さて、肉が食べられたのでなければ、
いったいどうしてこうなったのか? これは刃物で削がれたのではないな。
骨にほとんど傷が付いていないし、だいたいここまで顔の肉を削ぐとなると、
それなりの時間を要する。そんな時間は無かったはずだ」

「食べられたのではない。刃物で削がれたのでもない。では、どうやったって
言うんですか?」

「僕の直感では、これは薬物によるものだね」

「薬物?」

「そう。中国に『肉塊落』という液状の薬がある」

「聞いたこともないですよ、そんな薬」

「君は聞いたことがないかもしれない。世界中のほとんどの人も聞いたことが
ないかもしれない。だが、だからそんな薬は存在しないという証明にはならない
だろう。『肉塊落』は、骨付き肉に振り掛けると、肉が骨から分離しやすく
なるという薬だ。私の言うことが信用できないなら、彼に聞いてみればいい」

「彼?」

「このホテルに宿泊している老夫婦の旦那の方だ。彼は北京大学の教授で、
その世界では有名な薬学の権威だよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私と探偵は、ロビーに老夫婦を呼び出し、話を聞くことができた。
確かに男性の方は探偵が言った通りの人物で、中国では政府からも
VIP待遇を受けているほどの大物だそうだ。
『肉塊落』については、その中国人の教授も存在をある程度認めた。
薬学の世界で正式に認知されている薬ではないが、中国では昔から、
そういう効果を持つ薬品が牧畜の死骸処理等に使われている、との
ことだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そういえば、もう1組、宿泊客がいたはずです。女子大生風の
2人組が。探偵さん、彼女たちにも話は聞かなくていいのですか?」

「女子大生の2人組ね……。いや、話を聞くつもりはない」

「なぜ?」

「なぜかって? ふふん、このホテルの宿泊客は、あの中国人の
老夫婦だけだよ。女子大生なんていない」

「いない、って、いましたよ。部屋に案内されるとき、2階の廊下で
すれ違って会釈したんです。オーナー一家の人たちではないし、客室
フロアだったから宿泊客に違いないと思ったのですが」

「なるほど。しかし、女子大生の宿泊客がいないのは間違いない。
それはフロントで既に確認済みだよ」

「では、あの2人組は?」

「僕の直感では、変装だね」

「変装……誰の?」

「まあ単純に考えて、その年恰好の人物といえば、殺された君の彼女と、
その兄弟姉妹しかいないだろうね。長兄はもう少し年齢が上のようだから、
彼女の双子の妹と、彼女の弟だろう」

「ちょ、ちょっと待ってください。双子の妹って?」

「うん、双子。二卵性双生児。食堂で君も会ったんじゃないのか?」

「弟というのは」

「それも会っただろ? 女子大生2人のうち、1人は君の彼女の双子の妹、
もう1人は彼女の弟が女装していたのさ」

「女装って……なんでまた、そんなことを? 理由がわからない」

「理由か。その理由も含めて、今回起こったことのすべての理由は、
おそらくただ1つに集約される。そしてそれが事件の真相だ」

事件の真相。今はまったくわからない。
犯人が誰かというだけでなく、何かもっと異常な論理が私を取り巻いて
いるような気がしてならないのだが。

「さて、もう1つ解き明かさなければならないことがある。事件が起きる
直前、君は2階の部屋から5階の食堂へ1基しかないエレベーターで
上がっている。ほぼ同時に彼女は5階から君を迎えに2階へと向かった。
結果、すれ違ったことになるが、エレベーターには君と執事が乗っていた
のだから、彼女はそのエレベーターを使用していない。さあ、どうだい?」

「だから、彼女はきっと階段を使って2階へ降りたのだと思います」

「彼女は階段など降りていない」

「なぜ? またお得意の直感ですか?」

「彼女の死体は鍵がかかった君の部屋の中にあった。彼女は階段で2階へ
降りたとしても、君の部屋には入れなかったはずだ」

「私が鍵をかけ忘れていたかもしれませんよ」

「鍵はかかっていたのだろう? そしてその鍵は君のポケットの中にあった。
実は既に確認済みなのだが、執事は君が部屋を出るときにドアに鍵をかける
ところをしっかりと目撃しているそうだ。ついでにいえば、君が持っていた
鍵のほかには、フロントに合鍵があるだけで、それは全く持ち出されていない。
当然、彼女も持っていなかった。だから彼女は階段で2階へ降りても、鍵を
開けて君の部屋に入れたはずがない」

「でも彼女は私の部屋の中で死んでいた」

「他の方法を使って、5階から2階へ降りたのさ」

「階段でもエレベーターでもなく、ですか?」

「そう。ただし、エレベーターというのは間違いとはいえない」

「どういうことでしょう?」

「5階の彼女の部屋には、隠し通路ともいうべきルートがあったのだろう」

「抜け穴?」

「正確には、隠し通路の中に部屋があったというところかな」

「理解できません」

「部屋全体がエレベーターだったんだよ。彼女の死体が発見された部屋は、
君が案内されて入った部屋じゃない。5階の彼女自身の部屋さ。造りが
全く同じだったので気づかなかったのだろう。つまり、彼女は食堂を出て、
5階の自分の部屋に入り、どこかのスイッチを操作して部屋ごと2階に
降りたのだ。もしくは、スイッチを押したのは犯人という可能性もあるが。
5階の部屋だけが移動するということは、下の階の部屋のことを考えれば
ありえない。1階から5階までが1つながりになって動くのだろう。だから、
君の部屋はそのとき、地下2階にあたる位置に移動していたことになるね」

……。
……。とんでもない話だ。

「そういう仕掛けがあったにしてもですよ、彼女の行動に何の意味が?
だって、私を迎えに行こうとしていたんでしょう? 私の部屋が地下2階に
動いてしまっていたのでは、彼女が2階に降りても無意味じゃないですか」

「迎えに行く、という理由においては無意味かもしれない。しかし、
さっきの女子大生変装と同様、全く違うところに意味は存在するのだ。
ひとつひとつの些細な行動の意味ではない。この事件そのものの大きな
意味がね。さあ、かなり真相に肉薄してきたようだ」

「もう、たくさんです。早くこんな異常な状況から抜け出したい」

「もうすぐ、すべてが明らかになる。さて名探偵の僕としては、
愛すべきワトソン役の君に1つ尋ねたい。君は、何か気付いているだろう?」

「私が?」

「とっくに気付いていることがあるはずだ。しかし、君はまだ、それを
口にしていない。ワトソンたる者、気づいたことはすべてつまびらかに
しなくてはいけないんじゃないのかい?」

「何も気付いたことなんてありませんよ」

「そうかい? 君が言わないのなら僕が言おうか?」

「どうぞ」

「君は既にある疑念を抱いている。この事件は、『見立て』なんじゃないか、
とね」

「……」

「でも、それがあまりに馬鹿馬鹿しく、どんな意味を成すのか、まるで
わかっていない。意味が無いとしか思えない。だから口に出さない」

「確かに、このホテルに着いた瞬間から、いばら姫や、アリスや、
マザーグースの影がちらついていましたけどね」

「いばら姫の見立てか。ふん、ルイス・キャロルもマザー・グースも、
それは雰囲気をそれらしく盛り上げるための小道具だろう。君が
感じている見立ては、そんなものじゃないんだろう?」

「……違います、確かに。でも、探偵さんが言うとおり、そんな見立てを
する意味、必要性、動機、その効果、そんなものが皆目わかりません」

「君はわからなくても、わかる人間だっているかもしれないじゃないか。
君はその判断を秘めておくつもりかい?」

「こんなものが真相に関係あるはずがない!」

「関係あるのだ、馬鹿者! さあ、言いたまえ! 何の見立てだ?!」

私は、しばらく黙っていた。
しかし、この馬鹿馬鹿しい限りの見立ての意味を、この狂った探偵なら
明らかにしてくれるかもしれない、と思い始めていた。

「さあ、この事件の見立てとは?」

私は口を開いた。

「………十戒です」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

真相編
に続く。
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# by lifeblood | 2005-03-29 00:42